
親知らずの抜歯
親知らずの抜歯
「親知らず」は、顎(あご)の一番奥に生える歯で、永久歯のなかで最後に発育します。正式には第3大臼歯(だいさんだいきゅうし)といいますが、成人になって知恵がついて生えることから「智歯(ちし)」とも呼ばれています。また、親の手を離れ、親の知らぬ間に生えてくることが名前の由来ともいわれています。
「親知らず」には個人差があります。はじめからない方や上下左右の4本が揃っていない方、また、まっすぐに生えてくるとは限らず、横や斜めに生えたり、埋まったままだったりします。他の歯と同じように正常に生え、しっかりかみ合っている場合はとくに問題はありませんが、悪影響をもたらすような生え方や埋まり方の場合は、抜歯を検討する必要があります。
「親知らず」のトラブルは顎の大きさと関係性があります。現代人の顎の骨は昔と比べ小さくなってきていますが、歯の大きさはあまり変わっていません。そのため、一番最後に生えてくる「親知らず」は、スペースが足りず、正常に生えてこない場合が多いのです。斜めに生えてきたり、一部分だけ頭を出していたり、顎の中で水平で埋まったままということもあります。こうした状態にあると、むし歯や炎症を起こしたり、歯並びの悪化や顎関節症の原因になったりすることもあります。
「親知らず」の痛みは、生えてくるときに歯肉が他の歯によって傷つけられたり、細菌に感染し炎症を起こしたりすることによって生じます。
「親知らず」は歯肉が部分的に被ることで不潔になり、炎症が起こりやすくなります。この歯肉の炎症を智歯周囲炎(ちししゅういえん)といい、20歳前後の方によく見られる症状です。口が開けられなくなったり、痛みとともに熱が出たりすることもあります。「親知らず」が仕事や勉強の追い込み時に痛むことが多いのは、疲れやストレスなどで身体の抵抗力が落ちたときに炎症が起こりやすいためです。妊娠によるホルモンバランスの変化で、痛みが出ることもあります。
横向きや斜めに生えている場合、一生懸命磨いても歯ブラシがうまく当たらずに、「親知らず」や手前の歯がむし歯になる可能性が高くなります。
「親知らず」に被っている歯肉が智歯周囲炎を起こします。これが口臭の原因にもなります。また、「親知らず」の周りに汚れがたまることで、手前の歯ぐきも歯肉炎にかかりやすくなります。
上顎の「親知らず」が生えてくると下顎の歯ぐきを噛んでしまい、炎症や腫れの原因となります。
横向きや斜めになっている「親知らず」が手前の歯を強く押すことで、歯並びやかみ合わせが悪くなる場合があります。
「親知らず」が完全に顎の骨の中に埋まって無症状の場合や、痛みもなく周りの歯や歯列に影響がない場合は抜歯の必要は低くなりますが、親知らず自体が痛んだり、周囲に悪影響が出ている場合は抜歯をおすすめします。また、日頃から歯科健診を受けて、不具合の兆候がみられる「親知らず」を早期に発見し、適切な処置をしておくことも大切です。
抜歯がすすめられるケースには、主に以下のようなものがあります。
以下は、必ずしも抜歯をしなくて良いケースです。
「親知らずの抜歯」は、詳しい診察が必要となります。お悩みの際はお気軽に受診ください。
「親知らず」の抜歯を行う際には、状態を正確に把握することが重要です。抜歯時に近くの神経に触れたり、血管を傷つけたりしないために、「親知らず」の周囲の確認が必須となります。歯科用CTを活用することで、「親知らず」の部位を立体的に把握でき、神経や血管の位置を考慮しながら治療を進めることが可能です。
抜歯は、麻酔を十分効かせて行いますので、抜歯中に痛みを感じることはほとんどありません。まず、表面麻酔をしっかり効かせてから注射の麻酔を行います。万一、抜歯中に痛みがある場合は、麻酔を追加し痛みがない状態にします。痛みがあるうちは抜歯をしませんのでご安心ください。
カウンセリング
病歴・持病、ご要望、歯の状態を確認させていただき、治療の流れなどを説明いたします。(※安心・安全に抜歯を行うために、基本的に初日にすぐに親知らずの抜歯をおこなっておりません。また、部分麻酔では処置が困難と思われる多くの骨削除が必要と思われる抜歯については、連携医療施設へご紹介をさせて頂く場合がございます。)
歯の埋まり方、歯根の形、神経や血管の位置を歯科用CTで確認
まずは歯科用CTで、神経や血管の位置、親知らずの根を立体的に確認します。事前に「親知らず」の状態を詳細に把握することで、安全性を十分に確認して抜歯を行います。
抜歯準備
歯肉が腫れていたり炎症が起きている場合は、麻酔が効きにくかったり、術後の腫れが強くでてしまうことがあるため、まずは抗菌薬の服用やうがい薬などを使用していただき炎症を抑えて頂きます。抜歯は、炎症が落ち着いてから行うことが重要です。
表面麻酔と注射麻酔で痛みを抑える
表面麻酔を行い注射の痛みを感じにくくしたのちに、親知らずの周りに少しずつ丁寧に注射の麻酔を行います。これにより麻酔の痛みを最小限に抑えます。「親知らず」に歯肉が被っている場合、歯肉を切開して「親知らず」の頭を見えるようにします。
「親知らず」を抜歯する
親知らずの周囲に骨が被っている場合には、虫歯を削るような器具(歯科用エンジン)を使って骨を除去します。その後、専用の器具を使用して「親知らず」を抜歯します。横向きや斜めに生えている「親知らず」は、やはり歯科用エンジンを使って歯をいくつかに分割して取り除きます。
歯肉を縫合
抜いてできた穴の部分が、早く塞がるようにかさぶたの形成を促すために、歯肉を縫合します。また、ガーゼを強く噛んでいただくことで圧迫止血を行い、痛みや腫れを最小限に抑えます。
翌日の消毒
抜歯の翌日は、出血・細菌感染などの確認と消毒を行います。状態によって薬を調整します。
1週間後に抜糸
抜歯後1週間ほど経過すると歯肉が落ち着いてきますので、確認して問題がなければ抜糸をします。その後、3~4週間で傷口はゆっくりと盛り上がるように閉じてきます。凹みがあるとしばらく食べ物が詰まりやすいなどの症状が継続することがあります。骨は3~6カ月程度で回復します。※この期間には個人差があります。
術後2~3日は腫れや痛みがあります。また、かさぶたになるまでは出血しやすい状態になります。アルコールや運動、長時間の入浴など血行が良くなるようなことは避け、安静にしましょう。血が止まらない場合は、清潔なガーゼやティシュなどを丸めて穴の上に置き、しっかり噛むことで圧迫止血をします。抜歯当日は唾に血が混じる程度は正常です。
抜歯後数日は、うがいは、口に水を含んでやさしくもぐもぐしてそっと出す程度にとどめて、ぶくぶくと強いうがいは行わないようにしてください。強いうがいによって、抜いた穴の中にできるゼリー状のかさぶたが剥がれてしまうと、再出血や痛みが強くなるなど治癒期間が延びてしまうことがあります。
かさぶたが綺麗に出来なかったり剥がれたりした場合は、抜いた穴がなかなか塞がらず、骨の一部分が外から見えることがあります。この状態をドライソケット(治癒不全)といい、痛み止めを飲まないと耐えられない痛みが、1週間以上続くことがあります。目安として2週間経過しても痛みの状態が改善されなければドライソケットの可能性が高いので、受診してください。
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